本研究では、渋谷区代官山地域を対象とし、1)用途混在型市街地の形成とその変容、2)地域主体の成長管理の実態の解明を目的とし、以下の点が明らかとなった。 (1)明治末期からの山本氏、朝倉氏、西郷氏等の大土地所有者の土地が、旧華族や政治家、文化人の邸宅地、企業の社宅群や公的住宅団地に用途転換し、ヒルサイドテラス、ノースウェスト航空社宅、エバーグリーンホームズ、鶯住宅団地、乗泉寺、鉢山中学校、都立第一商業高校、西郷山公園等の地域空間となった。 (2)街区・建物レベルの用途混在化の傾向は、1980年以降にみられ、駅に近い代官山町・猿楽町で、業務・商業・住商併用の建物が増え、代官山アドレス周辺の街区での用途混在化の傾向が顕著となる。住宅団地や寺院の立地する鶯谷町・鉢山町では、戸建・低中層ビルが混在化した街区潜多く、鶯住宅団地・エバーグリーン周辺街区で住居用途の建物が多くみられた。 (3)重層的に存在する地域活動団体一町内会等の地縁型組織、まちづくりを対象とした生活環境系、商業を含む地域活性化系、来街者を含むサークル系の地域活動団体の発足及び活動経緯の追跡から、各団体の連携や交流が希薄で、とくにまちづくり団体と地縁型組織、行政との相互理解が不足している。 (4)商業・業務のオーナー等への営業やまちに対する意識調査から、新規参入の店舗経営者は期待と現実の営業実績との落差に困惑し、旧来からの店舗や事業者はテナントの流動化への不安を抱え、伝統的商店街組織と新規参入の店舗の交流不足による地域環境の劣化、地域解体への危機感を感じている。 (5)渋谷区まちづくり条例登録のわがまちルールによる近隣住民及び認定まちづくり協議会、行政、事業者の開発事業に関する事前協議の運用実態から、財産権や採算性の面での計画内容に関する調整が困難であり、地域の住民や専門家の立場からは、計画建築物の高さ・用途・周辺環境との関係性が、協議のポイントとなる。
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