研究概要 |
本研究は、今後20年間に約1.5倍に増加することかが予想される途上国の都市人口と、それに伴って必要とされる都市開発に対するコンパクトシティ政策適用の妥当性と適用方策を検討することを目的としたものである。 本研究の研究期間の最終年度である平成18年度は、研究協力者として慶應義塾大学総合政策学部の梶秀樹教授を加え、タイ王国国立タマサート大学建築計画学部と共同で、バンコク首都圏(BMR)の3区(Bangkapi, Bang Plee, Bang-Chalong)を対象として、人間・モノの総移動交通量試算モデルの開発及びその基礎的データ(PT調査・ヒアリング)の収集を行った(N=278)。 本調査研究の結果、1)上記3区における労働者の一日当たりの平均移動距離が40〜50Kmであるのに対して、1労働週当たりの総移動距離の平均が約100km前後であること、2)主要な鉄道駅への平均距離がおおよそ21〜30kmであることが明らかとなった。また、ヒアリング調査の結果からも、都市域の拡大とそれに伴う移動コストの増加が、労働者(特に低所得者層)の就労機会を阻害していることも同時に明らかとなった。その一方で、上記3区の人口密度は中心市街地(CBD)からの距離とは無関係に一定の高密度状態にあり、広範囲に拡大したバンコク首都圏においては、一点集中型ではなく、既存の区(ケート)ごとに中心部と行政機構を持たせたポリセントリック型のコンパクトシティ政策の適用が必要であることが明らかとなった。 また、17年度から開発を進めてきた土地利用・交通シミュレータのプロトタイプモデル(B_2SQモデル)に、上記調査で得られたデータを投入し、軌道系輸送機関の交通ネットワーク変数、土地利用変化変数を制御変数としたシミュレーションを行った結果、バンコク首都圏の周辺に8つのサブコアとしての小規模な都市核を配置した状態で、首都圏の都心部とサブコアを軌道系交通機関によってネットワーク化することによって、自動車利用の抑制と軌道系交通機関の利用の拡大が拡大することが明らかとなった。
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