本研究では、「もったいない」を根底に置き、日本的な感性を醸成してきた里山を舞台にものづくりを通して、「ひと」と「ひと」、「ひと」と「もの」の「いのち」をっなぐ環境教育・感性教育を試みることを目的とした。里山は、集落や農地(里)にくらす人々が生活に必要な「もの」を得るための林(山)であるが、全く人の手が入らない原生自然ではない。里山は、原生自然の一部に、ひとが適度に関わることによって、新たに生み出された生命豊かな自然なのである。日本では、古くから自然と共生してきた。里山とともにあった生活の中には、日本的感性である「もったいない」が存在していた。「もったいない」とは「もの」に「いのち」をみとめる「こころ」があらわれたものである。 具体的な研究内容は、里山で、綿の栽培・採集、糸紡ぎ、織り、里山から入手できる植物染料による染色、藍の栽培・染色などを小学校の総合的な学習の時間で8ヶ月にわたり実践した。そのなかで、ものづくりの手間と苦労を感じること、それを実際の生活に用いることにより、里山・自然と生活との関わりを認識し、ものの大切さを認識することができるような教育実践を試みた。さらに、学校教育の中だけではなく、地域にもその教育やその成果を広げ、幼児からお年寄りまで、また異年齢の子どもどうしの交流をはかりながら、里山を舞台にした「もの」の「いのち」の循環について、今回は「ふろしき」を取り上げ、実践を行った。 これらの「里山」を舞台にした学習の中で、子どもたちが地域の人とたちと関わり、体を使って植物を育て、手を使って「ものづくり」を行うことにより、「もの」の「いのち」の循環、「もの」を大切にする「こころ」、「ひと」とのコミュニケーションの重要性を身につけること、また、全国でも荒れて放置されている里山に目を向けることで、環境に対する感性を磨くことができたと考えられる。
|