平成17年度は、まず文献およびイギリスにおける研究動向の実地調査を行い、参加型学習を取り入れた授業のあり方と実践研究の方法論としてのアクション・リサーチについて、本研究の基盤となる理論をまとめた。その上で、本研究者が開催している授業研究会の定例会において、小・中・高等学校の教師たちと授業研究を行うこととし、各教師が平成18年度に向けてのアクション・リサーチの課題設定をし、授業内容の検討を重ねた。 参加型学習は、国際理解教育、環境教育、人権教育等の分野で広く活用されている学習方法であり、学習者の主体的な活動への参加によって、単なる知識の伝達ではなく自分の目で見て確かめ、考える学びを促すものとして注目されている。本研究ではERIC国際理解教育センターの角田尚子氏によって提唱されている「気づきから築きへ」とつながる学習プログラムに示唆を得て、家庭科をはじめとする教科や総合的な学習において、子どもたちが生活課題を通して自らの暮らしや身近な人々との関係を振り返るような学習を提起したいと考えた。 以上のような参加型学習の方法論を導入し、教師たちとの研究会を定期的に開催すると共に、教師らが授業改善の視点を持って授業開発に取り組むためのアクション・リサーチを組織した。約10名の教師たちは、自らの授業について具体的な課題を持ち、本研究者との話し合いや授業の参与観察を経て、授業をよりよくするための方法を検討していった。また本研究者は、ベテランの家庭科教師による小学校の家庭科授業の2つの単元の学習を継続的に参与観察し、子どもたちの自発的な学びがどのように立ち上がり、学習が深められていくのか追究した。 本年度の研究成果は冊子にまとめられ、年次研究報告書として『参加型学習と授業』No.1を発刊し、家庭科教育を初めとする教育関係者に配布し、参加型学習に対する理解を普及させるよう努めた。
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