研究課題/領域番号 |
17602005
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
野崎 武司 香川大学, 教育学部, 助教授 (80201698)
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研究分担者 |
安東 恭一郎 香川大学, 教育学部, 教授 (20284341)
北林 雅洋 香川大学, 教育学部, 助教授 (80380137)
植田 和也 香川大学, 教育学部, 助教授 (90363176)
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キーワード | いのちの学び / 総合的な学習の時間 / カリキュラム開発 / 主体的な学び / 人間存在の深さ / 綴り方教育 / 生活教育 / 単元づくり |
研究概要 |
本研究の目的は、「いのちの学び」にっながるこれまでの教育実践をレビューし、総合的な学習の時間をうまく構成するための授業開発、カリキュラム開発を行うことにある。 本年度の中核課題は、特に金森俊朗の教育実践に関するフィールドワークであった。まず研究分担者と理解を深めるために、金森実践に関する基本図書(中野光『教師としていまを生きる』ぎょうせい、金森俊朗『いのちの教科書』『希望の教室』角川書店)を輪読し、意見交換会を行った。さらに『生活教育』『子どもと教育』などの教育雑誌から、金森俊朗20代からの教育実践資料を収集・整理した。フィールドワークとしては、10月に金森氏を香川大学に呼び(学部経費による講演会)、本研究チームと懇談を行った。また研究代表者は、2月と3月に金森学級を訪問し、いくつかの授業を参観(授業記録化)し、金森氏と面談した。その他、各研究者が、「いのちの学び」をコアとした専門分野の授業実践レビュー考察を行った。 研究成果の大きなところは、以下に要約できる。生活綴り方教育や生活教育の影響を受けてきた金森氏は、特に若い頃、独自教材をもって先進的な実践を展開していた。その当時から、一つ一つの実践の意味をスケッチし、トータルに教えたいこと/学ぶべきことは何か、思い悩んでいたそうである。それが「いのちの学び」として集大成されるのは、最近のことであるという。金森氏の学校の総合的な学習は、学年団で展開されている。その同僚性の重要さから、各教科も独自教材ではなく、教科書の単元を用いて、それを深め、同僚に提案する形で、総合的に行われていた。教科書の各単元を、人・社会・いのちなどの人間存在の底流にある深い問題とつなぎ、子どもたちが主体的に学べるような形で再構成(社会科の「水道と生活」は「いのちと水」)されていた。3年理科の「蝶の一生」(いのちを生み出す大きな仕組み、自分もその中でいのちを与えられていることへの気づき)は、4年の保健「最近の私の心とからだの変化」(いのちを与えられた私は、少しずついのちを与えるものへと、知らない間に変化しつつあることへの気づき)と見事に呼応する構成になっていた。こうした一連の教科学習の中で総合的な学習(4年の田植えの学習、国際理解)が展開されていた。 金森氏の教育実践の特徴的な点は,教材づくり・単元づくり・カリキュラムづくりにある。身体性の解放(怒るべきところで怒れ!)、子どものリアリティに迫る(私が生きてるって不思議!)、観を育てる(いのちって、、、だと思いました)、共感の重視(分かり合う努力!)、自己肯定感への誘い(生きてるってすごい!)等、その特徴の形式化を試みている。しかし人間存在の深さに迫ろうとする教師の強靭な知性こそが要であると痛感させられた。
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