京都には、本膳料理、懐石料理、精進料理の精神を取り入れた日本を代表する食文化が現在も息づいている。ところで現在、五感で味わうことを知らない、また五感で味わえる食事が提供されていないがために食べることに関心のない児童が増えている。効果的な食育が実践されるためには、まず子ども達に、「食べること」に関心を持ってもらう必要性がある。そこで、京の食文化の精神やそのすばらしさ、「おもてなしの文化」「始末の文化」「五味・五色・五法を五感で味わう」等を実際に体験することで、食べ物だけでなく、それに関わる全ての人に感謝の気持ちをもつことができ、その気持ちを表すことができる児童を育成することを目的として本研究プログラムを実施した。 2005年7月〜11月にかけて、京都市立S小学校の協力を得、6年生児童70名に対し、総合的な学習の時間(国際理解)20時間を使って授業を展開させた。授業は、小学校、大学、地域住民、京都市内の料理店が協力して行った。 まず、世界各国には、その土地の気候風土に適した食文化があることを理解させたうえで、京都にも、その気侯風土にあった食文化が存在すること、特に京都には都があったという歴史的特殊性などが京料理に影響を与えていることを理解させた。そして、京料理を支える「だしの味」、「水の味」、「盛り付けの美」実際については実習授業を取り入れた。また和菓子を題材に、和菓子は耳でも味わう(御名から季節の風景を思い起こす)ことを学習し、実際に茶道の体験の中で和菓子を味わった。茶道用のお干菓子と床の間の花を一致させ(秋海棠)、季節のしつらえについての理解も深めた。さらに和室・和食のマナーを学習したうえで、京料理店に伺い、もてなしの実際(打ち水など)とプロの料理の技・町屋のしつらえを学び、京料理を五感で味わった。その後、調べ学習として、子ども達それぞれが関心をもった課題について調べ学習を行い、「京料理の秘密」としてまとめ学習の発表会を行った。それぞれの取組みの前後にはアンケートを行い授業の効果を検証した。 一連の授業実施後、児童は、「京料理のひみつ」は「おもてなしの心」であることを見つけた。また児童へのアンケートで、「京都の食文化を守っていきたいですか?」という質問に対し、「すごく守っていきたい」「守っていきたい」と答えた児童はあわせて97%に上り、また、「京都で育ったことを誇りに思いますか?」の質問についても、90%以上の児童が「すごく誇りに思う」「誇りに思う」と答え、京都の食文化について、児童それぞれがすばらしい点を発見できたのではないかと考える。さらに「本物」にふれることで、児童の食への関心が深まり、マナー等については家庭でも実践していることが親へのアンケートで示され、児童の行動変容にもつながったことが示された。今回の取組みに対する教師からの評価を踏まえ、23時間の改良プログラムを完成させた。次年度は、小学校が独自にプログラムの実施ができるように教材の開発に取り組む。
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