京都には、日本を代表する食文化が息づいている。従って、それらの精神性、つまり「おもてなしのこころ」「始末のこころ」「五味・五色・五法を五感で味わうこころ」「旬の素材を活かすこころ」等を体験することは、食べ物への関心を喚起するだけでなく、食の本質が学べる。 京都市立S小学校の協力を得、6年生児童に対し、総合的な学習の時間(国際理解)20時間を使い食教育を行った。 まず、世界各国には、その土地の気候風土に適した食文化があり、京都にも、その気侯風土にあった食文化が存在すること、特に京都には都があったという歴史的特殊性などが京料理に影響を与えていることを理解させた。 京料理を支える「だしの味」、「水の味」、「盛り付けの美」については、実習授業を取り入れ、感じたことを自分の言葉で表現させた。また和菓子には御銘があり、そこから季節の風景を思い起こすことを学習し、実際に和菓子に銘をつけさせた。これらは、児童の表現学習にもなった。 そして、地域の方の協力のもと茶道の体験をさせた。和室・和食のマナーを学習したうえで、京料理店に伺い、もてなしの実際(打ち水など)とプロの料理の技、京町家のしつらえを学び、京料理を五感で味わった。その後、子ども達それぞれが「京料理の秘密」について調べ学習を行い、児童は、「京料理のひみつ」は「おもてなしの心」にあることを見つけた。 また児童へのアンケートで、「京都の食文化を守っていきたいと答えた者は97%に上り、また、「京都で育ったことを誇りに思いますか?」の質問についても、90%以上の児童が「すごく誇りに思う」「誇りに思う」と答え、京都の食文化について、児童それぞれがすばらしい点を発見できたと考える。また「本物」にふれたことで、児童の食への関心が深まり、親へのアンケートから児童の行動変容にもつながったことが示唆された。教師からの評価も踏まえ、本食育プログラムを23時間の改良プログラムとして完成させた。これらの実績をもとに、「食育の玉手箱」という本を平成19年3月に出版した。
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