本研究の目的は、シーブ(Sieve)電極をラットの感覚神経束に埋め込み、人工感覚における刺激電極インターフェイスとして利用するための技術を確立することにある。本年度の研究実施計画は、現在所有するシーブ電極と新規開発改良した電極を鼓索神経と後耳介神経に埋め込み埋め込んで電気刺激を行い、刺激電極としての評価を行うことであった。新電極ついては、当初の予定どおり神経束の固定強度を上げる目的でシーブ孔の数を増やし、さらにインピーダンスを下げ同時に金属層がポリイミド基板から剥離しにくい構造にするために電極金属を金からイリジウムに変更したものを試作した。埋め込み前の電極の電気的特性を試験したところ、期待どおりにインピーダンス値を減少させることができた。神経線維束への埋め込みにはこの電極のほかに、白金イリジウム線を用いたカフ電極を使用した。現在迄に約10例の埋め込み手術に成功している。埋め込んだ神経は後耳介神経である。埋め込み後、2ヶ月以内に感覚刺激に対して複合活動電位が記録できた数例について、研究計画通りに電極を通じた電気刺激を行った。その結果、耳介感覚毛への触圧刺激や空気の吹き付け刺激で生じる反射的な耳介の攣縮運動同様の運動を電気刺激によって生起させることができた。これによりシーブ電極が人工感覚システムにおける刺激型神経-マシンインターフェイスとして利用可能であることがとりあえず実証された。今後は次年度にかけて長期間の慢性実験を行い、電極性能の試験や、長期埋め込み時に発生する問題点の調査や対策について研究を進める計画である。
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