【背景】スルフォラファンはnrf2を介して抗酸化酵素を活性化し、マウスの胃腫瘍発生を抑制する。スルフォラファンは新鮮なブロッコリースプラウトを経口摂取するときに口腔内で咀嚼することにより活性化される。我々はこれまでにスルフォラファンがH.pylori感染マウスにおいて高塩分食投与により惹起される胃炎を軽減させることを報告した。これまでスルフォラファンの大腸粘膜に及ぼす影響に関する検討はみられない。本研究では、スルフォラファンが炎症惹起物質DSSと発がん剤AOMの同時投与により誘発されるマウスの大腸炎と大腸腫瘍の発症を抑制するか否かについて検討した。 【方法】野生型とnrf2欠損マウス各20匹に対して、3%DSSを1週間経口投与した後、AOMを腹腔内に投与した。引き続き、半数のマウスにのみ2.5mMスルフォラファンを含むブロッコリースプラウトを連日投与し、2ヶ月間飼育した後、大腸を摘出し、大腸炎の程度、腫瘍の数、大きさ、及び大腸粘膜における抗酸化酵素GST活性、DNA傷害、IL-1β発現について検討した。 【成績】1.AOM+DSS投与により、すべてのマウスにおいて大腸炎と大腸腫瘍の発症が認められた。その程度は、野生型よりもnrf2欠損型マウスでより著明であった。 2.野生型マウスでは、ブロッコリースプラウト投与により大腸炎の軽減と大腸腫瘍発症の抑制効果が認められ、大腸粘膜におけるGST活性の上昇、DNA傷害の軽減、IL-1β発現の低下が認められた。 3.Nrf2欠損マウスでは、ブロッコリースプラウト投与による上記指標の変化は確認されなかった。 【結論】以上の成績より、マウスにおいて、スルフォラファン含有食品であるブロッコリースプラウトの投与により、DSS+AOMにより惹起される慢性大腸炎と大腸腫瘍の発症が抑制されることが明らかになった。今回の成績から、ヒトにおいても、スルフォラファン含有食品の継続的摂取により大腸癌発症の予防効果が期待されるところである。
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