研究概要 |
クランベリージュースおよびエキスについてCYP2C9およびCYP3A4阻害活性を指標に分離,精製を行った結果,クランベリーに特徴的な成分であるプロシアニジンAタイプ構造を有するプロアントシアニジンポリマーが,CYP2C9およびCYP3A4に対して比較的強い阻害活性を示した.次に実験動物レベルでの評価を行った.予めクランベリージュースおよびプロアントシアニジンポリマー画分を強制経口投与したラットに,ワルファリンを投与する.投与後48時間まで,経時的に1)ワルファリンの血中濃度の変化,2)タンパク質結合率,および3)ワルファリンの抗凝血作用の指標とされているINR値の測定を行い,クランベリーを投与していないコントロールと比較して,上記3項目を総合して相互作用の評価を行った.その結果,ワルファリンの血中濃度-時間曲線下面積(AUC)については,コントロールと比べて,クランベリージュース投与では変化は見られなかったが,ポリマー画分投与では弱いながらもAUCの増加が観察された.さらにポリマー画分投与では,ワルファリンの半減期の延長も観察されたことから,ポリマー画分がワルファリンの体内蓄積性の増加に寄与していることが示唆された.またINR値については,ジュース投与群とコントロール群では有意な差は示されなかった.さらにタンパク結合率の変化を検討した結果,ジュースおよびポリマー画分投与群とも,コントロール群との差は認められなかった.以上のin vitro系およびin vivo系実験のいずれの結果からも,クランベリーのプロアントシアニジン画分がCYPの作用を阻害し,ワルファリンの体内からの消失を遅延させ,長期投与するとワルファリンが蓄積し,さらに副作用の一因となる可能性が示唆された.
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