研究課題
大脳基底核は、運動の調節、筋トーヌスの調節などに関与している。また、オレキシンは、睡眠覚醒に伴う筋トーヌスの調節に重要な役割を果たしている。本研究では、大脳基底核による睡眠調節、特に睡眠時の筋トーヌス調節とオレキシン系との関係を明らかにするため、以下の実験を行った。1.無麻酔(頭部固定)の正常マウスにおいて、大脳基底核の出力細胞である黒質網様部(SNr)において、発火頻度が高く持続の短い活動電位を発するGABA作動性ニューロンの、睡眠・覚醒中の活動を記録した。その多くは、覚醒時とレム睡眠時に活動の上昇するタイプであった。今後は、SNrへのオレキシン入力の欠落している、オレキシンノックアウトマウスのSNrのニューロン活動を記録し、正常動物と比較する予定である。2.除脳ネコにおいて、筋トーヌスの抑制に関与する脳幹のアセチルコリンニューロン群(脚橋被蓋核:PPT)に電気刺激を与えると、筋トーヌスの消失(muscle atonia)が起こる。この刺激に先行して、SNrにオレキシンを投与すると、刺激によるmuscle atoniaが抑制される。また、PPTへの電気刺激に先行して、PPTにオレキシンを投与しても、同様の効果が得られる。つまり、オレキシンが、SNrのGABA作動性ニューロンや、PPTのGABA作動性終末、GABA作動性介在ニューロンを促進したことにより、PPTのatonia促進系が抑制された、と考えられる。3.これらの点を明らかにするため、PPTでの、オレキシンによるGABA放出量の変化を、マイクロダイアリシス法により測定した。PPTにオレキシンを投与すると、投与10分後からGABA放出量は上昇し、40分間にわたり、有意な上昇が続いた。この結果は、オレキシンがSNrやPPTのGABA作動系に作用してPPTのatonia促進系を抑制するという仮説を強く支持する。
すべて 2005
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