研究概要 |
健常大学生5名に対し断眠前の朝夕(第1日)と断眠後の朝夕(第2日)の4回free radical酸化能の指標であるd-ROM,抗酸化作用の指標であるBAP,口腔内酸性度を測定した。眠気の評価としてVisual analogue scale(VAS)とKarolinska sleep scale(KSS)を用いた。d-ROM,BAP以外の測定は更に翌日つまり回復睡眠後の朝夕(第3日)にも行った。被検者の睡眠覚醒リズム、特に断眠をしているかの確認のためにアクチグラフィーを装着した。 眠気はVAS,KSSとも第2日目は眠気が強く、回復睡眠後は断眠前と同等であった。 d-ROMは第1日目と第2日目の朝ではほとんど差はないが、第2日目の夕方に明らかな増加が認められた。部分断眠となった3人(部分断眠群)では第2日目朝に急激な低下が見られその後上昇していった。しかし全断眠群では2日目の低下は見られなかった。BAPは断眠直後の早朝が一番高く、夕方は減少した。全断眠群では徹夜明けの早朝に上昇し、夕方も高値を維持していたが、部分断眠群では部分断眠後の朝は低下していて、その後も顕著な上昇は見られなかった。口腔内酸性度は第2日目から高くなったが、全断眠をした2人(全断眠群)では第2日目が低く、反応が遅れた推定される。 d-ROM,BAPの被検者全体の結果をまとめると抗酸化能が先に活性化され、その後に酸化能が活性化される。全断眠では徹夜後に酸化ストレスの増大と抗酸化作用の明らかな活性化がみられた。部分断眠つまり短時間の睡眠を取ると酸化ストレスの増大がなく、かつ抗酸化作用の弱い活性化がみられ、結果として断眠ストレスが緩和されることが推察された。 また測定したストレスマーカーの変動からいえることは、個々のマーカーによって変動の仕方に違いがあるが、全断眠明け直後はストレスが軽減されているが、半日経ってからストレスの上昇が見られること、更にこのストレスのレベルは回復睡眠の後でも元の状熊にまで完全に戻っていないと推察された。
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