研究概要 |
生体リズムは遺伝子振動が行動や生体機能(ホルモン分泌など)にまで反映する極めてユニークな系である。副腎皮質ホルモンは非常に強い24時間リズムを示すことが知られており、その制御機構が注目される。従来より、副腎皮質ホルモンはストレスに強く反応し、その反応は視床下部・下垂体・副腎軸により制御されると言われている。しかし、サーカディアンリズムを制御するメカニズムは長い間不明であった。今回、我々は、光照射後の刺激伝達経路の解明や、無麻酔無拘束マウスでの経時的ホルモン検索法の開発により、マウスにおけるこの制御機構を解明した。 1)視交叉上核-中間質外側核-副腎神経-副腎ルートの解明 光照射後の遺伝子発現と微細手術を用いて、視交叉上核の時間情報が、中枢の交感神経系のルートを通り、脊髄中間質外側核から副腎神経を経て、副腎皮質の遺伝子転写を変化させ、血中コルチコステロンの分泌を増加させることを明らかにした(Cell Metabolism,2005)。 2)遺伝子組み換えマウスにおける無麻酔無拘束での血中副腎皮質ホルモンリズムの検索 糖質コルチコイドの血中レベルの日内変動の実験では、サンプリング時に断頭法が用いられており、動物に与えるストレスの影響を排除し得ない。今回、無麻酔無拘束マウスにての血液自動サンプリング法を開発し、コルチコステロンの血中日内リズムを検索した。さらに、視交叉上核破壊や遺伝子組み換えマウス(Cry1/Cry2ノックアウトマウス、Clockミュータントマウス)でも検索した結果、日内リズムは認められなかった。 3)遺伝子組み換えマウスにおける光誘導性副腎皮質ホルモン分泌の検索 コルチコステロンの血中日内リズムを持たない遺伝子組み換えマウスにおいても、光による副腎皮質ホルモンの分泌誘導は保たれていた。
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