研究概要 |
(1)ラムダ様反応の解析結果 レム睡眠期の急速眼球運動(REM s)直後に生起するラムダ様反応をトポグラフィ分析し,覚醒時に出現するラムダ反応と比較を行った.頭皮上の電流密度分布を調べると,レム睡眠中のラムダ様反応は第2次視覚野に出現し,覚醒時に見られるラムダ反応が第1次視覚野に出現することと大きな相違を示した.ラムダ反応が網膜映像の投射を受けてボトムアップ型に情報処理が進むのに対し,網膜映像の投射を受けないレム睡眠中は映像処理が進行した2次野から処理が開始されており,夢映像の不合理な合成はこのことに起因していることが示唆された(論文1). そこで2次元電流源密度データを3次元に展開してLORETA法により電源部の具体的な脳部位を検索した.その結果,レム睡眠中のラムダ様反応は楔前部(BA7,31)に出現すること,覚醒時に比べ前頭中心領域の部位で大きな電流源が存在することを明らかにした(論文2).これらの結果は橋からのREM s起動信号が高次視覚野を賦活して視覚心像が生成され,これが合成されて夢の映像が形成されていくという賦活合成仮説を支持している. (2)ラムダ様鋭波の解析状況 これまでに蓄積されたラムダ様反応のデータベースから元型を抽出した.このテンプレートを用いてNREM睡眠中の脳波を検討すると,後頭部優位に陽性鋭波が出現していることが確認された.試みにLORETA法により電源探査を行うと後頭視覚野が有力候補となった.ノンレム睡眠の夢見過程と関係については,現在,標本脳波を追加し精度を上げて検討中であり,成果は6月の日本睡眠学会で発表の予定である.
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