1.レム睡眠で音刺激により誘発される陽性電位成分P400は後頭部から側頭部に分布することから、レム睡眠の夢を構成する視覚心像の生成過程に関与していると期待されている。そこで、2音オドボール課題を用いて眼球運動がない区間(tonic期)と頻発する区間(phasi期)の応答性を比較したところ、夢見の報告率が高いphasic期ではP400は出現せず、夢見の報告率が低いtonic期に出現し、標準刺激よりも標的刺激に対して大きな振幅の反応が得られた。このことから、P400の発現には環境モニタ機能など注意の過程が強く関与しており、視覚心像の生成過程との関係は明瞭ではなかった。 2.レム睡眠中の急速眼球運動の停止点で後頭部に出現するラムダ様鋭波の電流源解析を行ったところ、視覚野(BA17、18)で発生していることが確かめられた。特に2次視覚野(BA18)の活動が顕著であったことから、夢を構成する視覚心像はかなりまとまった映像断片を合成したキメラ構造をなすことが推測された。 3.ノンレム睡眠の段階2と3で自発性に出現する睡眠時後頭部陽性鋭一過波(POSTS)は、後頭部に出現するラムダ様鋭波として記載され、ノンレム睡眠の夢を構成する視覚心像の生成に関与していると考えられてきた。今回POSTSの電流源解析に成功し、この電位は視覚野(BAl7、18)で発生していることが確かめられた。 以上の研究結果から後頭部に出現する陽性電位成分では、レム睡眠中の眼球運動に伴って出現するラムダ様鋭波と、ノンレム睡眠中に自発性に出現するラムダ様鋭波(POSTS)の2つが視覚野の神経興奮を反映しており、何れも夢の視覚心像が生成される瞬間を反映した現象であることを指摘した。
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