睡眠中に後頭部視覚野に生起する陽性鋭波(ラムダ様鋭波)を(1)入眠期、(2)ノンレム睡眠期、(3)レム睡眠期で検討し、視覚心像の生成過程との関係を検討した。 平成17年度は入眠期とレム睡眠期の音刺激に対する電位反応(後頭部陽性鋭波)の振る舞いを検討し、この陽性鋭波が夢の視覚心像の生成過程にどのようなかかわりを持っているか検討した。入眠期とレム睡眠期のいずれでも、音刺激に対して後頭部優位に陽性鋭波(P400)が出現するのを確かめた。入眠期心像の体験があるときにはこのP400振幅は減少するところから、視覚野の賦活状態を反映した活動であると思われるが、視覚心像の生起には直接的な関与は持たないとした。またレム睡眠中でも夢見報告率が高いレム頻発期で振幅低下を示すところから、環境モニタ系の反応と位置づけた。この研究成果は業績(1)と(4)で発表した。 18年度はノンレム睡眠期の段階2で出現する陽性鋭波と、レム睡眠中の眼球運動直後に生起する陽性鋭波を検討した。ノンレム睡眠段階2で後頭部に自発性に出現する陽性鋭波はPOSTSという名称で古くから注目されてきたが、今回の研究でPOSTSの電流源は後頭部楔部・舌状回であることを確かめた。これは第1次・2次視覚野に相当し、ノンレム睡眠の夢心像が発生する時点を示すものと考えられた。この研究成果は原著論文として投稿し、現在審査中である。次に、レム睡眠中の眼球運動に伴ってラムダ反応によく似た電位変動(ラムダ様反応)が出現するが、今回、REM-offsetで揃えて電位変動を調べた結果、眼球停留時にラムダ様反応が出現し、その電流発生源は後頭葉の襖部と舌状回にあることを確認した。ここは第1次・2次視覚野に相当し、レム睡眠の夢心像が生成される瞬間をしめす電位変動と結論付けた。この業績は(3)で発表した。
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