研究概要 |
本研究では,人間の睡眠の質を評価することを目的に,各種生体信号から睡眠に関連した特徴量を抽出する手法に関して研究を進め,以下の研究結果を得た. (1)ウェーブレット解析手法を用いた睡眠に関する特徴抽出 修正ウェーブレット変換解析手法において採用しているガボール関数の減衰係数を,非線形(シグモイド関数を利用)に調整できるよう修正を行い,サンプリング周波数500Hzでサンプリングしたデータを処理した結果,より安定したピーク周波数時系列を抽出できること,また,β波帯域におけるパワーの広がり情報に,睡眠脳波ステージに相関の高い情報を含んでいることを確認した. (2)自律神経リズム抽出法に関する検討(心電図解析) 心電位信号からR-R間隔時系列を抽出し,データ長1分毎のARスペクトル解析を行って,HF・LF成分の時間的変動の抽出を行い,睡眠脳波ステージ変動との相関を調査した.その結果,体動等の影響により,20秒間でも心拍が2倍以上変動する場合があり,自律神経リズムの安定した抽出の障害になっていることが確認され,一過性変動の取扱いについて更に検討する必要があることを確認した. (2)多チャンネル脳波信号の独立成分解析 独立成分解析法(ブラインドソース分離法)を多チャンネル脳波(視覚認識時脳波)の解析へ適用し,ソース信号数が6個程度であること,また分離信号と原脳波との相関情報から,ソース信号の概略の位置が推定可能であることを確認した.睡眠の場合,通常は,多くても4ch(C3,C4,O1,O2)の脳波を利用することから,ソース信号数より少ないセンサを利用している可能性もあり,現在,その影響について検討中である. (3)有向情報量解析 睡眠の質の評価のための特徴抽出手法として,有効情報量解析手法の適用方法ついて検討を行い,ソース信号数の仮定によって結果が異なること,つまり,各種睡眠パラメータの選択について,詳細な検討が必要であることを確認した.
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