【背景と目的】中学、高校生の睡眠問題は、日中の眠気を生じて学習効率を低下させる。また、心身の発育途上にある中学、高校生にとって、睡眠問題は精神的および身体的健康状態に重大な影響を及ぼす。従って、中高生の睡眠問題の実態を把握し、これらの問題に対して策を講じていくことは公衆衛生学的に重要である。そこで我々は中学1年生から開始して、高校3年生まで追跡調査を行う睡眠縦断研究を開始した。 【方法】東京都内で6年間一貫教育を行っているN大学付属の三つの中学校1年生全員(698人)を対象として、担任教師がアンケート調査票を配布し、生徒が記入し、封筒に入れシールで密封したものを回収した。 【結果】女子の平均睡眠時間は6時間49分で、男子の7時間11分に比べて有意に短く(P<0.01)、女子は男子に比べて就寝時刻が遅く、起床時刻が早い傾向が認められた。また、女子は男子に比べて「短時間睡眠」、「睡眠自己評価が悪い」、「睡眠障害」、「就寝時刻が遅い」、「日中の過度の眠気」の全ての睡眠問題で、その頻度が有意に多いことが示された。「睡眠時間が短い」と「通学時間が長い」、「日中の過度の眠気」と「学習塾や習いごとに通う」などのように、それぞれの睡眠問題について個別の関連要因が認められた。「いじめの被害」は、精神的健康度との関連が認められたが、睡眠問題との関連はなかった。 【考察】これらの知見を今後の中学生高校生の睡眠衛生に活かしていくことが重要と考える。また追跡調査にて睡眠問題とその関連要因の経時的変化を捉え、更に解析を深めていきたいと考える。
|