研究概要 |
思春期は、身体的にも精神的にも、また、社会的にも発達の途中にあり、その睡眠習慣は変化しやすい。そのため、思春期の睡眠問題は、学校保健においても学校教育の観点からも重要な課題であるといえる。そこで、本研究課題では平成17年度から、思春期の睡眠習慣についての疫学調査を実施している。本年度は、東京都内に在る3つの高等学校の2年生を対象に、自記式質問票調査を実施した。特に、本年度は睡眠を得るための自己調節法の実施率と、睡眠自己調節法と昼間の眠気との関連性を明らかにすることを主要な目的とした。調査に対して協力の得られた1,042人について集計したところ、睡眠自己調節法の実施率は、軽食が21.4%、運動が27.3%、入浴が41.8%、読書が20.5%、音楽を聴くが46.5%、規則正しい生活を心がけるが26.2%、コーヒーを飲まないが13.1%、昼寝を減らすが13.2%、眠くなってから床に入るが33.5%、朝早く起きるが16.2%であった。昼間に眠気を感じる者の割合は70.5%であり、ロジスティック回帰分析では、「昼寝を減らした」ことにおいて、昼間の眠気に関するオッズ比が有意に低い値を示した。本研究では、高校生の睡眠自己調節のなかでは、音楽を聴くことや入浴を行っている人が比較的多いことが明らかとなった。昼寝を減らすことと昼間の眠気の間には、負の関連性が認められた。横断調査のため、因果関係を確定することはできないが、昼寝を取りすぎることが夜間の睡眠を障害し、結果として、昼間の眠気をもたらす可能性が考えられた。また、本年度の研究においては、高校1年生時から高校2年生までの精神的健康度の悪化と、悪夢や睡眠麻痺との関連性についての分析も併せて行った。しかしながら、精神的健康度の悪化と悪夢や睡眠麻痺との間に有意な関連性は認められなかった。本研究課題で得られた知見は、思春期を対象とする今後の健康教育に活用され得るものである。
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