内因性睡眠物質であるプロスタグランジン(PG)D2やアデノシンA2A受容体アゴニストであるCGS21680をラットの脳内に投与して自然な睡眠を誘発した。そして、睡眠中のラットの脳内における睡眠関連遺伝子の発現変動をDNAチップにより解析した。その結果、発現が上昇する遺伝子として、heatshockprotein27(HSP27)、metallothionein-1(MT-1)およびglial fibrillary acidic protein等のグリア細胞での発現が確認されている遺伝子を見出した。そこで、触覚刺激による6時間の断眠直後のマウス脳を、大脳皮質、脳梁、海馬、視床、視床下部に5分割し、各部位におけるこれらのグリア細胞マーカー遺伝子のImRNA発現変動を定量的PCRにより調べた。その結果、断眠直後では、HSP27およびMT-13遺伝子は大脳皮質においてmRNA発現量が増加していた。また、マイクログリアで発現する造血器型PGD2合成酵素(H-PGDS)のmRNA発現量は5分割した全領域で、Ibal mRNA発現量は視床・視床下部で、オリゴデンドロサイトに発現するpi-GSTmRNA発現量は大脳皮質・脳梁・視床下部で低下した。免疫組織化学においてもH-PGDSおよびIba-1遺伝子産物の免疫反応の低下が認められた。また、オリゴデンドロサイトで発現するリポカリン型PGD合成酵素(L-PGDS)は、in situ hybridizationおよび免疫組織化学により、断眠後の陽性シグナルの増強が確認できた。これらの結果より、断眠中にグリア細胞のマーカー遺伝子の発現が変動することが確認できた。
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