研究概要 |
不眠を訴える産褥婦の睡眠障害として、主に産褥期うつ状態(産褥ブルーズ症候群)と子どもの睡眠覚醒リズムのフリーランに起因する睡眠障害が考えられる。本研究は、これらの睡眠障害の病態解明とその概念の確立を行う。 産褥期に生じる睡眠障害を明らかにするためには、実際に不眠を訴える患者のポリグラフ記録が必要である。しかしながら産褥期うつ状態の患者や子どものリズムがフリーランした場合、患者は不眠を訴えるが、医療機関を訪れることは少ない。産褥期うつ状態は、産褥婦のおよそ20%に見られ、子どものフリーランは、新生児の10%あると予想されるが、これらはアンケート調査などにより行われたretrospectiveな研究によるものである。 そこで妊娠後期(33週、36週)から妊婦に呼びかけ、産褥期に適応、非適応にかかわらず、数多くの妊婦のポリグラフィ・アクチグラフィを行い、その中で睡眠障害を訴える患者の協力を頂き、prospectiveに本研究を行う。 妊娠33、36週に連続3日間の母のアクチグラフィ、出産2週目より連続1週間の母子のアクチグラフィを行う。妊娠33、36週、産褥2週の連続アクチグラフィの最終日に母親の睡眠ポリグラフィを行い、胎児の動き(胎動センサーは特許公開中)や新生児の動きを母親の睡眠ポリグラフィと同時に記録する。その後、12週まで、アクチグラフィを行うと共に、電話や訪問インタビューを行って、うつ状態に関しての心理検査、授乳状況、子どもの睡眠覚醒リズムが確立していく過程をチェックしていく。現在、データを収集中である。これらの実験に関しては、妊婦に研究協力者として文書にて同意を得て行っている。 本研究の一連の仕事の中で、健康な産褥婦の睡眠内容を明らかにした。特に母乳授乳を行っている産褥婦については、夜間の睡眠時間は短くなるが、デルタ波で代表される徐波睡眠が、非妊産婦より多く、効率的な睡眠をとっていることを発表した。(Nishihara, K., Horiuchi, S., et al., Delta and theta power spectra of night sleep EEG are higher in breast-feeding mothers than in non-pregnant women. Neuroscience Letters, 368, 2004:216-220.) さらに妊娠後期には胎児の動きにより睡眠障害があることが知られているが、胎動により脳波上に変化があることを、本年度の日本睡眠学会に発表した。(2005,宇都宮)
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