研究概要 |
産褥婦の睡眠障害として、産褥期うつ状態(産褥ブルーズ症候群)と子どもの睡眠覚醒リズムのフリーランに起因する睡眠障害が主に考えられる。これらの睡眠障害は、産褥期に適応しているか否かを示すほどに、母親の重要な訴えである。本研究は、これらの睡眠障害の病態解明とその概念の確立を行う。 本年は、主に妊娠後期(33,36週)と産褥期(2週)に終夜睡眠ポリグラフィを9名の初産婦に行った。その際に妊娠期においては、胎児の動きを、産褥期においては、新生児の動きを母親の睡眠ポリグラフィと共に同時に記録した。産褥期の母親の睡眠を考えるのにあたって、母親の睡眠内容と子どもの発育との関係は重要で、従来の睡眠変数だけで母親の睡眠内容は語れない。さらに妊娠後期から睡眠状態を把握することが産褥期の睡眠に重要と考えた。 本年度は、特に母親の睡眠脳波に生じるmicro-arousalについて明らかにした。micro-arousalは、睡眠中に生じる微小な覚醒で、3秒以下の脳波上の覚醒反応であり、micro-arousal出現後すぐに睡眠ステージに戻り、寝ている本人には覚醒の自覚はない。しかし睡眠時無呼吸症の患者に多いなど、睡眠障害の一つの指標と考えられるようになった。そこで、本研究では、妊娠後期から胎児の動きによるmicro-arousal,産褥期には、新生児の動きによるmicro-arousalを検討した。その結果、妊娠後期33週は、36週よりmicro-arousalが増加し、33,36週共に非妊産婦女性より増加していた。産褥期においては、micro-arousalより、中途の覚醒時間が増加していた。 これらの結果は、日本睡眠学会に発表をした。 西原京子,堀内成子,江藤宏美,本多真;妊婦の終夜睡眠中のmicro-arousal(MA)の特徴:非妊娠-産褥女性との比較検討.日本睡眠学会第31回定期学術集会,大津[2006/06/29】現在、論文投稿中である。 研究協力者として被験者になった妊産婦のほとんどが、産褥期に適応していたために産褥期うつ状態の睡眠を検蓄できなかった。今後、うつ状態のケースを追う予定である。 子どもの概日睡眠覚醒リズムの形成過程で見られるフリーランが、母親の睡眠にどのような影響を与えるかについては、ポリグラフィを行った母子ペアに対して、アクチグラフィを出産2、6、12週に行った。各週連続5日間通して記録した。計画的系統的な実験では、子どものフリーランリズムは観察されなかったが、フリーランしているケースが1組だけ記録できた。現在、データ処理中である。今後、例数を増やす予定である。
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