研究概要 |
産褥期の睡眠障害として、うつ病、産褥期うつ状態(産褥ブルース症候群)と子どもの概日睡眠覚醒リズムのフリーランに起因する睡眠障害が考えられる。これらの睡眠障害は、産褥期に非適応状態をつくり、睡眠不足でも適応している健康な母親の睡眠と異なるのだが、こうした概念の確立はなされていない。 本研究では、特に産褥期うつ状態と子どものフリーランによる母親の睡眠障害に焦点をあて、精神生理学的手法でprospectiveに研究を行い、上記概念の確立を目的とした。実験計画としては、妊娠後期33週、36週に母親の睡眠ポリグラフィと胎児の動きの同時記録、母親のアクチグラフィ、質問紙を行い、産褥期では、出産2,6,12週に母親の睡眠ポリグラフィと子どもの動きの同時測定、母子のアクチグラフィ、質問紙を行った。その結果は、以下のようである。 1、妊娠後期では、母親の睡眠脳派(10名)に胎動で誘発されたmicro-arousalが観察され、33週のほうが36週より多かった。(Early Human Dev, 2008, in press) 2、産褥期では、産褥期に適応している母親は、睡眠時間は短いが、中等度の深度の睡眠が短く、深い深度の徐派睡眠は変化がなく、効率的な睡眠をとっていることが明確になった。 3、産褥期うつ状態の産褥婦は、今シリーズでは記録できなかったが、以前の研究では、うつ状態を脱した時点では、睡眠率は適応型母親と同等な睡眠をとった。しかし母子の同調を欠いていた。 4、子どものフリーランにより母親の睡眠障害を生じたのは、1組あり、母子の活動量の記録を長期間行った。母子の活動量からリズム解析を行った結果、母親の妊娠後期の概日睡眠覚醒リズムの周期が長く、産褥期の母子のリズムへの影響が考えられた。(睡眠学会、2007)
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