断眠は、喚気応答を抑制し、上気道開大筋活動を低下させる可能性があることから、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)に対して悪影響を及ぼす可能性があるが、この点についての研究報告の結果は一致をみていない。また、断眠を加えることが、OSAS患者の覚醒維持-精神作業機能にどのような影響を及ぼすかという点についての検討は十分行われていない。本研究では、上記の問題を明らかにする目的で、眠気の自他覚症状を欠く(覚醒維持機能検査ならびにEpworth sleepiness scaleが正常域)11例の軽〜中等症水準のOSAS症例に対して、2日間の夜間部分断眠を付加し、その後の覚醒維持機能検査(MWT)所見、覚醒機能を示す精神作業機能検査(PVT)、事象関連電位(P300)検査所見について検討するとともに、断眠からの回復夜における呼吸障害指標の特性を調べ、健常対照者と比較した。 その結果、断眠条件下でのMWT潜時の延長は、OSAS患者の方が健常者に比べて優位に大きく、PVTでのlapse増加率も高かった。また、P300振幅の低下の程度は両群同様であったが、潜時延長率は患者群の方が有意に高かった。また、回復夜での無呼吸低呼吸指数は患者群で有意に増加しており、呼吸障害持続時間も延長していた。 以上より、軽度の断眠であっても、OSAS患者では覚醒維持機能低下度(=眠気の増大)が健常者より大きく、精神作業機能が低下しやすいこと、脳内情報処理機能が抑制されることがわかった。また、呼吸障害自体も悪化する可能性が高いことが明らかになった。OSAS患者では睡眠不足を避けるようにしないと、疾患自体に悪影響が及ぶだけでなく、社会活動へ悪影響が及ぶ可能性が示唆された。
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