研究概要 |
1)出生コホート調査における生後7か月でのアトピー性皮膚炎(AD)発症と臍帯血単核球の腸内細菌,菌体成分刺激によるサイトカイン(TNF-α,IL-10)産生量の関連について検討を行い,i)E. coli刺激による臍帯血単核球からのTNF-α産生は,AD発症群においてAD非発症群よりも有意に低下している,ii)グラム陽性および陰性菌さらに菌体成分の刺激刺激による臍帯血単核球からのIL-10産生は,AD発症群においてAD非発症群よりも有意に低下している,ことを明らかにした。単球表面上のTLR2およびTLR4の発現量には差異がなかったが,Affimetrix社製DNAチップを用いたmRNA発現解析においてもAD発症群ではAD非発症群に比較してTLR4刺激によるIL-10.IL-12,インターフェロン等の発現が低く,出産時の臍帯血単核球の自然免疫応答能が乳児期のアレルギー疾患発症に関連することが示唆された。シグナル伝達分子発現等については現在解析中だが,少なくともMyd88依存性,非依存性の2経路におけるシグナル伝達異常が示唆されている。 2)Isopentenyl pyrophosphate刺激による臍帯血γ9δ2T細胞数のIFN-γ産生能は成人に比して著明に低下しており,そのひとつの理由としてIL-2Rβ鎖の発現低下が示唆された。IL-12添加によるIF-γ産生増強はなかったが,TNF-αはIsopentenyl pyrophosphate刺激による臍帯血γ9δ2T細胞数を増加させた。その理由として,TNF-αがIL-2Rβ鎖の発現を増強する機序が示唆された。臍帯血単核球が得られた新生児のアレルギー発症の有無により臍帯血γδT細胞機能に差異があるか否かについては検討症例数がまだ十分でなく結論は得られていない。現在解析数を増やしている。
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