研究概要 |
1.臨床的検討 1)環境真菌Basidiomycetes属の重要性 (1)従来の検討によって,重要な環境真菌としてBasidiomycetes属が同定されていたが,難治性慢性咳嗽患者の誘発喀痰中から培養された真菌のDNAシークエンスによる解析によって,我々の注目している環境真菌がBasidiomycetes属に属するBjerkandera adusta(和名:ヤケイロタケ)であることが判明した。 (2)アトピー咳嗽患者では,咽頭拭い液の真菌培養によって,Basidiomycetes属はカンジダの次に多く(約20%)検出された。 (3)Basidiomycetes属の抗原抽出液の作成に成功し,本抗原抽出液に対する即時型皮内反応を実施した。アトピー咳嗽患者では陽性率が約20%程度であり,非アトピー健常者の5%以下に比較して高率だった。 (4)喀痰からBjerkandera adustaが培養同定された難治性慢性咳嗽患者7例の検討では,同真菌の抽出抗原に対するリンパ球刺激試験と抗原吸入負荷試験が陽性であったが,皮膚反応は3例のみが陽性をしめし,非IgE依存性のアレルギー反応の重要性が示された。 2.基礎的検討 1)モルモットを用いて,アトピー咳漱と咳喘息のモデルを作成し,その病態の比較を行った。 メサコリン吸入によって気管支収縮を惹起すると,平滑筋収縮の大きさに相関して咳嗽が誘発されることが判明したが,その平滑筋収縮-咳回数の回帰直線の傾きが,咳喘息の病態に重要である可能性が示唆され,この反応にAδ神経が関与していることが判明した。
|