本研究は転写因子IRF-2欠損(IRF-2^<-/->)マウスで認められるCD4^+T細胞の自発的Th2型分化機序の解明を通じて、好塩基球依存的なTh1/Th2分化制御機構の解析を行ったものである。野生型と比べIRF-2欠損マウスではTh2細胞が増加していることから、IRF-2欠損マウスのCD4^+T細胞は生体内で既にTh2にシフトしていることが示唆された。しかしながらIRF-2^<-/->ナイーブT細胞では、IL-4産生の増加が認められなかったことから、自発的Th2シフトはT細胞自身の異常ではなく、何らかの環境因子が原因と考えられた。環境因子としてTh2分化に重要なサイトカインにIL-4があるが、興味深いことにIRF-2欠損マウスではIL-4産生細胞である好塩基球が増加していた。そこで好塩基球のTh2分化誘導能を検証するため、in vitroのTh1/Th2分化誘導系を構築し、好塩基球由来のIL-4がTh2分化に重要であることを証明した。さらにはc-kit変異(W^v/W^v)xIRF-2欠損マウスを交配して作成した二重変異マウスでは好塩基球の数が正常値に近づくとともにCD4^+T細胞の自発的Th2シフトが解消されていることを明らかにした。 IRF-2の作用機序に関しては、(1)IRF-2^<-/->好塩基球は、野生型とほぼ同程度のIL-4産生能を示すこと、および(2)IRF-2欠損マウス骨髄細胞は1L-3による好塩基球の分化増殖能は野生型に比して約3倍増加していること、これらの結果からIRF-2はIL-4産生制御機構には直接関与せず、好塩基球の分化・増殖を制御していることを明らかにした。 本研究の成果は、免疫応答初期にT細胞より産生されるIL-3が、好塩基球を活性化しIL-4を産生させ、indirectにTh2を誘導するという新しいTh2分化機構を示唆するものである。
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