研究概要 |
自然免疫系は、感染初期の生体防御機構のみならず、獲得免疫系の機能調節細胞の役割も担っている。しかしながら、自然免疫系細胞の分化、機能調節の研究は未だ発展途上である。本研究は、生体内に少数しか存在しない好塩基球に注目し、2型免疫応答に重要なTh2細胞分化及び感染免疫獲得機構の解明を目的とする。具体的には、好塩基球のIgEを介したエフェクターとしてではなくTh2分化誘導を促進する作用について解析した。その結果、好塩基球は免疫応答初期にナイーブT細胞によって産生されるIL-3依存的にIL-4産生細胞として作用し、Th2分化を促進していることが明らかになった。さらに、インターフェロン制御因子(IRF2)欠損マウスでは好塩基球が増多しており、その結果Th2分化が亢進していることを明らかにし、in vivoにおける生理的役割も明らかにした。また、好塩基球におけるTh2分化誘導能はIL-4産生に依存していることから、好塩基球のサイトカインの産生制御機構についても解析した。これまでT細胞で明らかになっている転写制御に関与する遺伝子STAT6,GATA3は、好塩基球では全く関与していないことから、IL-4産生には好塩基球特異的な機構が存在することが推察できる。我々はFc受容体γ鎖(FcRγ)欠損マウスの免疫応答の解析を通じて、FcRγが好塩基球のサイトカイン産生に必須の分子であることを明らかにし、さらにIL-3刺激による好塩基球の増殖・サイトカイン産生は全く独立したシグナル伝達経路が用いられていることも明らかにした。以上の知見はIRF-2欠損マウスで見られた好塩基球の増多とIL-3によって誘導される増殖の亢進(Hida他Blood,2005)とは対照的であり、IL-3の下流シグナル伝達経路においてIRF-2とFcRγは異なる経路にそれぞれ特異的に関与していることが明らかとなった。
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