HGFは胎生期において肺上皮組織の成長及びその形態形成を促す"器官形成因子"として、また成体では障害を受けた組織を速やかに修復しその機能を回復させる"器官再生因子"として作用するが、喘息病態における意義は全く不明である。この間葉組織に由来し、上皮系細胞の増殖、遊走、形態形成誘導活性、抗アポトーシス作用を有するHGFが、気道炎症及び気道過敏性、またリモデリングの形成機序にいかに関与しているかを解明し、さらにマウス喘息モデル及びリモデリングモデルにrecombinant HGFあるいはHGF遺伝子導入による遺伝子治療の有効性を検討することは、今後さらに増加すると考えられる喘息の発症及び重症難治化病態をより詳細に把握しかつ制御する上で非常に重要な研究である。今回申請者は、喘息発症モデル及び慢性喘息(リモデリングモデル)を作製後、recombinant HGF及びanti-HGF抗体を投与し気道炎症及び気道過敏性の変化、Th1及びTh2サイトカイン、線維化の中心的増殖因子であるtransforming growth factor-β(TGF-β)とその主たる産生細胞である好酸球と筋線維芽細胞、さらに気道上皮細胞の障害、気道基底膜下結合組織の肥厚などの気道の線維性変化を検討することにより、HGFがアレルギー性気道炎症(BALFおよび肺組織中の炎症細胞浸潤、TGF-β、PDGF、NGF等の増殖因子及びIL-4、IL-5、IL-13等のTh2サイトカイン)、気道過敏性、さらに気道リモデリング(気道上皮細胞の増殖・杯細胞化、上皮下線維増生、気管支平滑筋の増殖・肥大)を抑制的に制御することを明らかにし、世界ではじめてAm J Respir Cell Mol Biolに報告した。
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