研究概要 |
1.本年度の研究フィールドであるラオスにつき,(1)制度改革の進展度を測る情報として,(i)経済状況((1)国内総生産,(2)消費者物価指数,(3)輸出入,(4)会社数,(5)外国投資の受入状況,(6)公共投資),(ii)政治状況((1)表現の自由,(2)参政権),(iii)社会状況((1)市民社会活動,(2)マスコミの活動)を調査した。また,(2)権利体系の構築度を測る指標として,土地権原の確定・登記,民法・商法上認められた実体法上の権利の類型,それらの訴訟法・執行法上の取扱い,倒産手続における債権の実現状況,自由競争を保障するための競争法の整備状況,農地改革・税制改革などを通じた再配分システムの整備状況などを調査した。さらに,(3)法の支配の確立度を測る指標として,権力行使をコントロールする行政システム,立法プロセスの透明化,司法へのアクセスの確保,裁判・判決の公開・公表システム,裁判所と行政(とくに司法省,検察庁)との権限関係,市民社会を構成する非営利的・非国家的団体の設立を支える制度の整備・実施状況などを調査した。 2.権利体系の構築や法の支配の確立に対して影響を与えうるインフォーマル・ルール(文化的な慣行を含む)として,(1)財産法・土地法ルールに乗らない森林の利用慣行,相隣関係における土地利用調整のルール,(2)金融取引における担保法ルールとは異なる担保設定慣行,(3)露天商の広範な存在と政府による不定期・不完全な管理,(4)刑事事件に対する警察捜査の限界事例,(5)民間取引に関する許認可に要する時間・結果に対する予測の困難さ,(6)司法省をはじめとする立法プロセスにおけるシニア層の役割と裁量権限の大きさ,(7)土地使用権の収用に対する不完全補償の事例の存在を検証した。
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