研究概要 |
1.本年度の研究フィールドであるミャンマーにつき,(1)制度改革の進展度として,(i)経済状況((1)国内総生産,(2)一人当たり国民所得,(3)輸出入・外国投資),(ii)政治状況((1)表現の自由,(2)参政権),(iii)社会状況((1)市民社会組織,(2)マスコミの活動),(2)権利体系の構築度指標として,(i)土地権原の確定・登記,(ii)コモン・ロー,制定法等によって認められた実定法上の権利類型,それらの訴訟法・執行法上の取扱い,(iii)競争法の整備,(iv)農地改革,税制改革などを通じた再配分システムの整備,(3)法の支配の確立度指標として,(i)行政権行使のコントロール・システム,(ii)立法プロセスの透明性,(iii)裁判・判決の公開と市民の司法アクセス,(iv)裁判所と行政(とくに法務府,国家計画・経済開発省)との関係,(v)非営利的・非国家的団体を支える法制度の整備について調査を試みた。統一的指標に基づいて継続的に実施された統計,公開資料が少なく,実像把握のためになお調査を続行している。 2.ミャンマーでは,イギリス植民地時代から蓄積・承継された判例法,個別制定法等を基盤とする実定法に従い,裁判手続を中軸とする法の支配が相当程度に進展しており,権利保護が比較的きめ細かく行われている家族法などの領域がある。しかし,実体法における権利体系の内容においては,慣習法の影響が強い結果,一般経済取引や市民活動の領域ではグローバル化に対応した内容には至っていない点もあり,国内外の企業家による活動を誘発するためのインセンティブを付与する観点から,慣習法との調整プロセスを組み込んだ制度改革プログラムの策定が求められる。
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