●オーストラリア各地での先住権紛争(開発事業の影響評価、環境保全の手法と価値観をめぐる対立・訴訟・調停・協定交渉など)について、連邦各州の公的調停機関に登録された事件を中心に、報道コーパスもふくめ、個別紛争事例を収集した。ILUA(先住民族地使用包括協定)に特に留意した。また、狭義の土地権法制(連邦の修正先住権原法と各州の先住権原法および先住民土地法ないし土地権利法)の対象とならない事例であっても、資源主権・環境権・交渉同意権(RTN)をめぐる紛争事例は検討対象とした。 ●得られた個別情報(コーパス)を分析し、事件別レコードとして土地権紛争データベース(昨年度までの研究で構築してあったFMPファイル)に追加入力した(レコード数2043件、ファイル容量16.5B)。3年間にわたる情報収集で得られた内容をふまえ、データベースの項目設定を見直し、分析キーワードを補充し、レコードのレイアウトを修正した。 ●日系企業が関与する資源開発事例としては、キンバリー地方における沖合ガス田開発をめぐる先住民族との対立・調停・協定締結の経緯について情報収集分析した。この他、日本への資源輸入に大きく関わる注目すべき事例として、カーペンタリア湾岸地方におけるマカーサーリバー鉱山の拡張問題についての報道コーパスを重点的に収集分析した。 ●2007年11月の総選挙の結果、連邦政権が交替し、先住民族政策・環境政策も大きく変わることとなった。総選挙前の半年に前政権が強行し、大きな論争を招いた「北部準州のアボリジニー共同体管理への介入政策」(Commonwealth Intervention)について情勢分析し、政権交替後の動静にも留意した。2008年2月に連邦議会でおこなわれた先住民族への公式謝罪についても、Interventionとの関係を軸に分析を試みた。
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