研究概要 |
本研究では、オーストラリア各地での先住権(native title rights)および先住民土地権(statute Aboriginal land rights)をめぐる紛争・係争・交渉・調停などの諸事例について、事実関係と背景に関する情報を網羅的に収集し、分析・整理した。その主要な成果物は、コーパス(テキスト資料群)を効率良く検索・利用するために構築された簡易データベース「Native Title claims, accords and disputes : 1994-2008」(容量28.2MB、件数2,104件、検索フィールド数152)である。 コーパスの主たる情報源は、マスコミ報道、諸々の先住民族組織や土地評議会の発信媒体、AIATSIS/NTRU彙報、環境保全団体からの通報、個別事例の当事者・関係者へのインタビューなどである。内容面では、とくに鉱山開発をめぐる交渉、国立公園管理運営をめぐる問題、水域(海域)権・資源権をめぐる係争に重点をおいて分析した。 研究期間中にオーストラリア連邦で政権交替があり(2007年11月)、先住民族政策・環境政策も大きく変わることとなった。総選挙前の半年に前政権が強行し、大きな論争を招いた「北部準州のアボリジニー共同体管理への介入政策」について情勢分析し、政権交替後の動静にも留意した。2008年2月に連邦議会でおこなわれた歴史的な「先住民族への公式謝罪」についても、この「介入政策」との関係を軸に分析した。
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