研究課題
基盤研究(C)
本研究では、好冷菌Shewanella sp.由来のCold-active protein-tyrosine-phosphatase(CAPTPase)について、活性発現能と触媒部位近傍構造の柔軟性維持に必須な構造要因との相関性を明らかにすることを目標とした。高分解能X線結晶構造解析から、CAPTPaseの触媒部位が主に化学結合力の弱い疎水性相互作用で構築されていることを明示した。これらの疎水性相互作用を形成するアミノ酸残基を置換した変異型酵素の機能解析から、触媒部位において亜鉛イオンと配位結合するA78、H80、D114を正しく配置させるために必要と考えられる疎水性部位(Zn-1部位)において、V79、V85、I115、L145、I307の側鎖による疎水性相互作用が本酵素の機能発現に寄与する柔軟性維持に重要であることを示した。さらに、D114を含むループに位置するI115をメチオニンに置換したI115M変異型酵素の触媒効率が野生型酵素のそれの1.65倍の値を示すことを見出し、その立体構造を1.5Åの分解能で決定した。野生型酵素とI115M変異型酵素について、決定した立体構造を比較したところ、主鎖構造の相違は認められなかったが、変異型酵素においては置換したM115の側鎖がalternative conformationを示した。この結果から、野生型酵素に比べて高い活性を示すI115M変異型酵素では、115番目のアミノ酸残基がイソロイシンよりも疎水性の低いメチオニンへ置換されることによって、Zn-1部位の化学結合力が弱められ、野性型酵素に比べて高い柔軟性がZn-1部位に附与されたと考えられた。即ち、CAPTPaseにおいては、触媒部位近傍に位置するZn-1部位を形成する疎水性アミノ酸側鎖の化学結合力が触媒効率に影響する1要因であると結論した。
すべて 2006
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Memoirs of graduate school of science and technology, Kobe university 24-A
ページ: 23-31