研究概要 |
本申請課題は、RNA修飾酵素の分子進化をゲノム情報に基づいて分析し、実際のタンパク質構造情報や生化学的解析の結果と対比させ、基質RNAとの共進化について考察するという内容でした。本申請では、四つの中心計画と、二つの挑戦的課題を準備しました。 四つの中心計画とは、(1)RNAメチル化酵素の基質RNA認識機構の解明,(2)タンパク質の保存アミノ酸配列の役割の解明,(3)修飾塩基自身の機能の解明,(4)RNA修飾酵素と無細胞翻訳系の新規利用法の開発であり、二つの挑戦的課題とは(5)コンピューターを利用したタンパク質分子進化の逆算,(6)RNA修飾酵素がDNAに作用することによる遺伝子への影響でした。四つの中心計画は、ほぼ当初の予定どおり、研究を遂行することができました。一方、挑戦的課題は、やはり相当に難航しましたが、学会等で発表できる成果をいくつか得ることができました。 二年間の研究期間でしたが、平成18年度の研究成果は、極めて多岐にわたります。論文や学会で報告した事例として、(1)TrmHファミリーのtRNA結合に関して、新知見を報告した(2)DNA-RNAキメラ核酸を調製し、TrmH-AdoMet-tRNA三者複合体の形成にはじめて成功した(3)TrmDファミリーにあらたな基質特異性をもつ酵素を発見し、報告した(4)真正細菌型TrmBの触媒ドメインの機能について新知見を得、報告した(5)酵母Trm8-Trm82複合体の基質RNA認識機構について報告した(6)Aquifex aeolicus由来Trm1が従来知られていないRNA認識機構をもつことを報告した(7)TgtがDNAに対する潜在的触媒活性をもつことを示した(8)高度好熱菌が、培養温度の変化にあわせて、tRNA修飾を変化させ、タンパク質合成系を質的に変化させる模様を追跡した(9)無細胞翻訳系で補因子結合タンパク質のアポタンパク質の生産に成功し、その構造変化の追跡のため、tRNA修飾をもたないサプレッサーtRNAシステムを開発し、非天然アミノ酸プロービングに成功した(10)無細胞翻訳系を用いて、ヘテロマルチサブユットRNA修飾酵素の生産に成功した等があげられます。
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