研究課題
基盤研究(C)
本研究では、好アルカリ性細菌Bacillus pseudofirmus OF4株のべん毛形成と運動特性の解析、電位駆動型Naチャネル欠損によって生じる走化性異常の分子機構の解明を目的とした。この機構を解明することで、好アルカリ性細菌のNa^+サイクルと走化性の関係が明らかになるのではないかと期待された。まず、OF4株のべん毛形成と運動特性の解析を行った。同時に以前に取得した軟寒天培地上での運動性向上株と野生株とのさまざまな条件での運動性の比較を行った。次に、これらの結果を基にOF4株の電位駆動型Naチャネル欠損によって生じる走化性の異常がどのような分子機構よって起こるのか解明することを目的とした。OF4株の中性環境での運動性が低下する理由は、べん毛の発現が抑制されるからではなく、中性環境下ではNa^+駆動型のべん毛モーターがH^+により競合阻害を受けているという可能性や、中性環境下における電気化学的ポテンシャル.の低さが影響している可能性が考えられた。一般に、pH7付近まで生育が可能な好アルカリ性細菌は、生育においてアルカリ性よりも中性環境下でより多くのNa^+を要求する性質があり、べん毛モーターにもこれが当てはまるのではないかと示唆された。運動性向上株の高粘性液体培地やアルカリ性軟寒天培地上での運動性の向上には、べん毛の本数の増加による複数のべん毛が束になった構造(バンドル構造)を形成したことが起因していると考えられた。また、Na_vBPとMcpXが細胞の極で共局在していること、Na_vBP欠損株の走化性異常はMcpXの脱局在化が寄与している可能性が示唆された。桿菌においてMCPは細胞の極に局在化することが知られているが、膜電位駆動型チャネルが極に局在しているという報告例はこれまでになく、新規性の高い発見である。微生物の電位駆動型イオンチャネルは、哺乳類のイオンチャネルの構造解析に役立っており、この結果は好アルカリ性細菌の研究だけでなく、イオンチャネルの研究においても役立つことが期待される。
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