研究概要 |
本研究ではネットワーク上の経路探索とクラスタリングの二つのアルゴリズムについて、そのセキュリティ要件を明らかにし、これをプライバシを保護しつつ実行するためのプロトコルを考案した。 ・プライバシアウェアな最適経路探索サービス 平成17年度ではWeb上の経路探索サービスにおける、クライアントが入力した訪問地点や訪問日時などの個人情報を開示することなく最適経路探索を探索するための局所探索法を考案し、一回のクエリについて要する計算時間および通信量を定数オーダーまで削減した。平成18年度では局所探索を遺伝的アルゴリズムに発展させることで、最終的に得られる経路の最適解からの誤差率を10^<-3>%以下と、極めて最適解に近い解をプライバシを保護したままで得ることに成功した。これらの研究成果は国内シンポジウム(暗号と情報セキュリティシンポジウム(SCIS)において口頭発表により公表した.またGenetic and Evolutionary Computation Conference (Gecco2007)にて発表予定である. ・k-meansクラスタリングにおけるユーザー志向プライバシ保護 本稿ではPeer-to-Peer(P2P)ネットワークにおけるプライバシを保護したk-meansクラスタリングを提案した.Privacy-Preserving Data Mining (PPDM)は分散して蓄積されたデータを用いて、互いにデータを開示することなくデータマイニングを実行する技術である.従来のPPDMは参加ノード数が比較的少ないことを想定しているが、参加ノード数が多い場合には、(1)メッセージ交換におけるグローバルな同期が保障されない,(2)参加ノードはプロトコル実行中に停止するか,接続が切断される可能性がある,などの可能性を考慮すべきである.このような困難さに対処しつつ,プライバシ保護と計算効率性を両立させるために,プライベートな非同期平均計算プロトコル(private AACとプライベートな最近接点決定(private EDC)を組み合わせたk-meansを提案した.提案プロトコルはノード数が10^4程度の大規模ネットワークにおいても,現実的な時間に完了することが数値実験により示された.これらの研究成果は国内シンポジウム(電子情報通信学会コンピュータセキュリティ研究会(IPSJ-CSEC)において口頭発表により公表した.
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