研究概要 |
(1)三値論理によるXTRを用いた公開鍵暗号方式 ElGamalタイプ公開鍵暗号の解読の困難性は、離散対数問題の困難性を利用したものであり、安全性の確保のためには、元の数が大きな体Fpが用いられる。Lenstraは新しい公開鍵暗号方式XTR(Efficient and Compact Subgroup of Trace Representation)を提案している、これは整数qの体Fqの6次の拡大体Fq^6の元が、そのトレースをとることにより、2次の拡大体Fq^2の元で表現できることを利用したものであり、鍵の長さ、暗号文の長さを、安全性を同一に保ちながら、従来の公開鍵暗号の1/3に短縮できる。本研究では、標数3の体Fq(整数qとして、3の奇数巾(q=3^<2k+1>)を用いる)を用いることにより、体の6次の拡大体Fq^6の元が、そのトレースをとることにより、もとの体Fqの元で表現できることを見いだした。この標数3の体を用いることで、LenstraのXTRより、鍵の長さ、暗号文の長さをさらに1/2に短縮できる。さらに、標数3の体の実装に、三値論理を用いることにより、効率のよいハードウェア実装が可能なことを示し、ソフトウェア実装に比べ約100倍の高性能化が図れることを示した。 (2)三値論理回路の構成のためのCADツールの開発 三値論理回路の設計検証のためのツールとして三値論理回路用の論理シミュレータを開発した。三値論理関数は二変数関数に限っても3^9=19683種類あり、そのすべてを組み込むことは現実的でない。そこで論理関数は関数シンボルに対応させて必要なものだけ外付けで組み込むようにした。またシミュレータカーネルは論理値の値とは独立な仕組(値独立カーネル)として実装した。シミュレータカーネルは二値の論理シミュレータとまったく同一であり、違いは、入力値の読込みルーチンと出力値のプリントルーチンに限定される。また、このような構成により、0,1,2の三値にも、-1,0,1の対称三値にも対応できる。
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