近年、ノード(ピア)がクライアントとサーバの両方の役割を担い、互いにデータ共有を行うピア・ツー・ピア(P2P)ネットワークが注目されている。本研究では、非構造P2Pネットワークにおける効果的な複製配置方式および更新情報伝播方式の確立を目的としている。 2年計画の初年度である平成17年度は、まず、非構造型P2Pネットワークにおいて、問合せ成功率の向上とネットワークトラヒックの削減を実現するための複製配置方式を考案した。提案方式では、各データへのアクセス頻度が既知である理想的な環境を想定し、データのアクセス頻度に応じて、データアクセス時に問合せを伝播した経路上のピアが確率的に複製の配置を決定する。この方式により、複製数の最適比として知られているデーアクセス頻度比の平方根にほぼ近い数の複製を配置することが可能となった。 今年度はさらに、シミュレーション実験により、提案方式の有効性を検証した。実験結果から、提案方式は従来手法に比べて、上述の平方根配置に近い複製数を実現でき、問合せ成功率を大幅に向上することを確認した。 次年度は、今年度の提案方式を拡張し、データアクセス頻度やネットワークトポロジを、周辺ピア間で交換される問合せメッセージなどから自律的に見積もる方法について検討する。さらに、データ更新が発生する環境を想定し、効率的な更新伝播法についても検討する予定である。
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