研究概要 |
本年度の検討は,まず,騒音制御国際会議(INTERNOISE2005)に参加して,本研究の核となるツールである新しい音響計測法についての発表と意見交換を行うことを通じて,騒音制御と計測に関する最新の技術情報の調査を進めることから開始した。これらの調査を背景として,初年度にあたる今年度は,2つの具体的な技術項目に関して,最終的な課題の実現に向けた検討を進めた。本研究では,音響信号の打ち消しが鍵となる。 第一の技術項目は,マイクやスピーカ特性の正確な特性の把握である。ここでは,これまで検討してきた非線形時間軸操作に基づく測定法の改良と,新しい音響計測法の特性測定用信号であるWTSP(Warped Time Stretched Pulse)信号の拡張を進めた。また,高ダイナミックレンジでの測定を進める過程で,ナイキスト周波数付近において,これまではっきりとは報告されていなかった妨害成分が発生することを見いだした。この成分については,その後の検討により,被測定系の非線形性と標本化による折り返しによるものであることを明らかにした。 第二の技術項目は,適応処理による打ち消し量の最大化である。ここでは,利得と群遅延に拘束条件のある最小化問題としての検討を進めた。また,これらの検討結果を検証するための,実音場における予備実験系を構築した。なお,本格的な検討は次年度に行う予定であるが,近接音源の知覚に関する予備的検討を開始した。
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