今年度は2項目について実施した。第1の項目は人体表面形状からの内部構造の推定を行うための手法の開発を行った。あらゆる人体表面形状に対して共通な位相構造を有する比較的粗いメッシュを設計し、計測した詳細な人体表面形状に、特徴点を基準としたルールを適用することによってメッシュの頂点を決定する手法を開発してきた。2種類の内部構造が既知である人体データの表面形状から上記のメッシュを作成する。得られた2つのメッシュを基準として、2体のデータの表面上の点を対応づける。この対応関係と1方の人体の内部構造の情報から、バネ-質点モデルを用いて他方の内部構造の推定を行った。他方の人体データの内部構造は既知であるが、これと椎定によって得られた構造を比較すると内部構造にずれが見られるが、計測例を増やしパラメータを調整することで精度を向上できると考えられる。これによって人体モデルの作成のための基本的な情報が得られ、個々の人体モデルを作成することで感性製品設計に資することが期待される。 第2項目は内部構造が既知である人体データに基づき力学的な人体モデルを作成した。詳細な人体内部データを粗視化し、骨格特に背骨の部分を脊椎間のジョイントとし、他の部分を弾性体としてモデル化を行った。ベッドをモデル化し、人体モデルをベッドのモデルに仰臥させるシミュレーションを試みた。これにより仰臥の姿勢やベッドから受ける圧力が得られた。ベッドの硬さを変化させて仰臥姿勢が変化することが確認でき、圧力も定性的に妥当な分布が得られた。今後異なる形状の人体モデルを用いてシミュレーションを行うことで、個々人の仰臥時の状態の予測が可能となれば、個々人に最適なベッドの特性が得られると考えられる。このことによって、個々人の特性に合わせた個人対応製品設計に資するものと考える。
|