研究概要 |
音楽・映画といった著作物は、近年情報のディジタル化にともない、購入者による違法複製が極めて容易となった。しかも、爆発的に普及したインターネットが、その匿名性により違法な取引を助長している。ディジタルコンテンツの著作権を守る情報セキュリティ技術の確立が急務である。コンテンツ自体に著作情報を埋め込む電子透かしが注目されているが、その中でも流通経路上での機密保全と著作権保護の両方を保証するものが望まれている。本研究では,スペクトル拡散技術のセキュリティ機能に着目した電子透かしを構成する。スペクトル拡散に利用するi.i.d.2値系列は,カオス力学系に基づき発生させる.本研究で提案する方式では、流通経路上での機密保全を意識して、無線通信時にコンテンツの信号と透かし情報を多重化して送信する. 初年度の成果は次の通りである.i.i.d.2値系列を得るための十分条件を与え、それが可換な有理関数写像であるヤコビ楕円関数写像を含む広いクラスの1次元写像で生成される実数値系列の独立性判定にも適用可能であることを明らかにした.また,楕円暗号がWeierstrass型楕円関数とその微分間の代数的関係式である平面曲線で規定されることに鑑み,ヤコビ楕円関数とその微分,2階微分間を規定する(x, y, z)-空間曲線とその上の力学系及び各軸の1次元射影写像を定義した.その結果,三種類の射影写像は上記十分条件を満たすので,曲線上の実数値軌道ベクトルの2進展開は3次元i.i.d.2値ベクトル系列となることが明らかとなった.またこれを応用し,3次元2値ベクトルによる高精細なカラー画像用ストリーム暗号システムが実現できることを示した.
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