研究課題
(1) 覚醒度に関連する神経ホルモンの唾液中アミラーゼや男性ホルモンのテストステロンが大きい時間割引率と関連する。(2) 時間割引の意思決定の際に知覚されている心理時間が、心理物理学で見出されている(スティーブンスのべき乗則というよりもむしろ)ウェーバー・フェヒナー則に従っていることにより、時間割引関数が(指数関数ではなく)双曲型関数によって記述されていることが考えられる。(3) 双曲型時間割引が、時間知覚に関連するドーパミン作動性神経回路の非シナプズ的電気的結合(ギャップジャンクション)によって担われているという可能性が考えられる(4) 時間割引の意思決定を、遅延報酬の受取人ではなく、ほかの人が代りにおこなうと、時間割引関数の双曲性(時間非整合性、非合理性)が強まってしまう(5) 意識下の感情が意思決定において重要な役割を果たすことを主張する「ソマティックマーカー仮説」の論拠となっているアイオワ・ギャンブリング課題における行動が、双曲型確率割引関数によって説明可能である(6) 時間割引や不確実性下の意思決定を記述する上で、Tsallis非加法的統計力学におけるq-指数関数が有効である(7) 喫煙者は、お金の分配における不平等性を嫌うほどには、タバコの分配の不平等性を嫌うわけではなく、依存性薬物と通常の報酬の価値判断を担う神経メカニズムが異なっている(8) 遅延報酬を手に入れることができる確率の主観的見積もりは、遅延時間の増加にともなって双曲型の減衰を示すが、時間割引が完全に不確実性回避に帰着されるわけではない(9) 結果の確率すら不明な不確実性下での意思決定は、結果の符号と大きさに依存し、従来提唱されてきた劣加法的主観確率仮説が完全に正しいわけではない
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