現在、DNAアレイデータやPOSデータのような超高次元データに対する解析法が注目されており、その中で高次元データを低次元に縮約する手法は基本的な問題である。特に、コンピュータ指向の解析手法である射影追跡法は高次元データから低次元における構造を抽出する方法として広く利用されている。これは、正規分布からの離れ具合を規準にして、「興味深い」低次元構造を見出すものである。しかし、非正規性が必ずしも「興味深い」とは限らない状況が少なからず存在する。そこで、研究代表者は、参照とするデータを設定し、その分布からの離れ具合を規準にして、「興味深い」低次元構造を見出す相対射影追跡法を提案した。 相対射影追跡法において参照とするデータを正規分布とすると、従来の射影追跡法となることから、射影追跡法の拡張となっている。本研究課題では、相対射影追跡法に関する理論構築から実用レベルにおける利用方法の提示までを目的とする。 本年度は、相対射影追跡に関する基礎理論の構築および基本アルゴリズムの開発に重点をおき、以下の事項について研究を実施した。 (1)従来の射影追跡法は、射影指標により定義される。これと同様に、相対射影追跡法も相対射影指標によって定義することができる。そこで、従来の射影指標である、Friedman指標、Hall指標、Moment指標を、それぞれ相対射影追跡のための指標に拡張した。 (2)上記の相対射影指標の特徴を理論的に検討し、さらにシミュレーションにより比較検討した。 (3)層別逆回帰、独立成分分析をはじめとする他の次元縮小・特徴抽出の手法との関係を検討した。
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