平成18年度には、平成17年度の成果の発展および、それらの成果をもとに相対射影追跡の適用範囲の拡張について検討した。以下に具体的な研究成果を示す。 関数データに対する相対射影追跡法を構築した。関数データ解析は、これまでのデータ解析の枠組みを拡張するものとして注目されている。すなわち、従来のデータ解析では、データとして、ベクトルや行列のなどの構造を有する数値の集合を想定してきた。これに対して、関数データ解析では、これを拡張してデータを関数として扱う。多くのデータ解析手法は関数データに対しても適用できるように拡張されてきた。しかし、射影追跡法については、ほとんど拡張がなされていない。さらに、相対射影追跡法についての研究は皆無である。そこで、関数データに対する相対射影追跡法を開発した。 関数相対射影追跡法を評価するために、実際の人間の成長データに対して本手法を適用した。第1射影関数は7歳以降の成長速度を示しており、第2射影関数は9歳以前と以後の成長直線の差を示めしていた。この2つの射影関数により、低身長の女児にのみに存在する構造を見出すことができ、低身長である人の成長パターンを分類することが可能となった。 本研究課題の関連手法として、制約付主成分分析法、パラメータ推定を含むモデル選択、クラスター分析法について、それぞれ新たな手法・理論を構築した。また、これらの手法を適切に組み合わせることにより、ネットワークにおける通信遅延に関する解析を実施した。特に多次元尺度構成法により、通信遅延およびその安定性について図的表現を行うことができた。
|