研究課題
中枢神経系は膨大数のニューロンと、これよりさらに多数のグリア細胞から成立している。古典的な解釈では、グリア細胞の役割は周辺のニューロンの足場もしくはエネルギー補給といった"脇役"であると考えられてきたが、近年、複雑な神経機能の遂行にグリア細胞が決定的な役割を演じていることが明らかになってきた。本年度は、ダリアと神経ネットワークの活動を統合的に理解する目的で、我々が近年改良を重ねてきたCaイメージング法を海馬スライスに応用することで、異種細胞ネットワークの活動を高次元で記述することを目指した。まず、ニポウ板型の共焦点顕微鏡システムを構築し、画像取得とパッチクランプ装置と刺激装置をメタモルフ環境のジャーナルによって同期させることに成功した。これによって自発発火だけでなく刺激に対する応答を、イメージングと電気生理記録の両者で高い精度で記録できるようになった。またCa指示薬のロード条件を詳細に検討し、さらに効率のよい負荷法を編み出し、視野内のほぼ100%の細胞から活動を記録することが可能になった。この新しい系(←おそらく世界で一番美しい記録ができている)を用いて、現在、大きく二つのプロジェクトを進めている。一つはグリアのカルシウムシグナルと神経細胞のスパイク活動を総数百個の細胞レベルで再構築することにより、そこに隠れた数理特性を抽出することである。もう一つはGFAP-GFP transgenicマウスを用いることで、グリア細胞から出る突起の微細構造の動態(motility)を観察することである。このmotilityがどう神経活動によって調節されているかを検討している。この相互に密接に関係した二つの研究を平行して続けることで、本課題が終了する予定である18年度末には一定の成果が残せるものと確信している。
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