多様な大脳皮質GABA作働性ニューロンの構成・シナプス結合ルールに関して統一的な理解を進めるために、どのGABA細胞からも容易に生理的記録ができるモデル動物の開発を目指してきた。これまでに、vesicular GABA transporter遺伝子を含むbacterial artificial chromosomeを使って、黄緑色の蛍光蛋白質VenusでGABA細胞が選択的に標識されたWistarラット(VGAT-Venus rat)を作成した。これまでに、このラットの大脳皮質で蛍光免疫組織化学を用いて、GABA細胞サブタイプの同定に使われている6種類の化学的マーカーの発現を確認するとともに、GABA細胞での化学的サブタイプの定量的構成を明らかにした。今年度は、Venus陽性皮質ニューロンの生理的性質のサブタイプごとの分化を確認するとともに、分子発現との相関や化学的サブタイプの中での多様性について検討した。これまでに特異的発現する分子が知られていない新皮質ニューログリアフォーム細胞について、late-spiking patternの発火様式を確認する同時に、化学的マーカーとの関係を検索したところ、アクチン結合蛋白質であるalpha-actinin-2を選択的に発現していることがわかった。多様な形態のGABA細胞を直視下で同定できるVGAT-Venus ratの利点を活かして、parvalbuminを発現するfast spiking cell(FS細胞)の多様性を検討した。その結果、FS細胞の大きさは多様であり、細胞体が大きいものほど樹状突起の垂直方向への伸長が大きいことがわかった。一方、電気的性質や水平方向への樹状突起の拡がりには差はあまりみられなかった。これらにより、VGAT-Venus ratのGABA作働性ニューロンや大脳皮質回路解析における有用性を示すことができた。
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