1)ACNU耐性ラットグリオーマ細胞株のin vitroにおける幹細胞としての特性の検討 i)グリオーマは化学療法・放射線治療に対し抵抗性を示し、これらの治療後一旦縮小しても、しばしば悪性化を伴って再発する。昨年度Green fluorescent protein(GFP)を安定的に発現するラットグリオーマ細胞株C6(GFP-C6)を神経幹細胞の培養条件下で培養し、細胞株から幹細胞の性質を持つ腫瘍細胞(C6-TSC)を選択的に増殖させることに成功した。さらに、化学療法後に残存する腫瘍細胞が腫瘍幹細胞としての性質を持ち、より悪性度の高い腫瘍として再発する可能性を考え、化学療法剤ACNU 100μg/mlを上清に加えてGFP-C6を2週間培養し、残存する細胞を選択した。 ii)ACNU耐性C6細胞において各種神経系の分化マーカーに対する免疫染色を行ったところ、C6-TSCと同様に、元の細胞株ではみられなかったO4(オリゴデンドロサイト前駆細胞のマーカー)やneurofilament(成熟したニューロンのマーカー)の発現がみられ、この手法により選択された細胞が多分化能を有していることが示された。 2)グリオーマ腫瘍幹細胞のラット脳への移植 ACNU耐性C6細胞をラット脳に移植したところ、C6-TSCと同様に浸潤性の増殖を示し、腫瘍形成能を有することを発見した。残りの研究期間ではこの実績に基づき、更にC6-TSCおよびACNU耐性細胞を異なる発生段階の異なる部位に移植し、正常神経系前駆細胞の移動様式との比較の上で、グリオーマにおける組織の成り立ちと腫瘍幹細胞との関係を考察する予定である。
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