神経管は背側からのBMPやWntシグナルと腹側からのShhシクナルによって背腹軸に沿ったパターン形成が行われる。脊髄前駆細胞は、背側から腹側にかけてそれぞれ異なった領域を形成し、各々の前駆細胞から異なったタイプの細胞が分化する。カドヘリン-7は非典型的カドヘリンに属し、ニワトリ初期胚では移動中の神経提細胞、背側と腹側神経根のboundary cap、運動神経、床細胞、後根神経節、筋節などに発現する。以前、我々は選択的スプライシングによって生じる可溶性カドヘリン-7が存在し、カドヘリン-7の接着を阻害することを見出した。カドヘリン-7は脊髄横断面の背腹軸の中央に帯状に発現している。その内在性カドヘリン-7の発現領域の背側境界は、背側神経前駆細胞に発現する転写因子Pax7と境をなしている。 我々は、カドヘリン-7の機能解析のためニワトリ初期胚神経管にエレクトロポレーションによって異所性にカドヘリン-7を発現させた。異所性カドヘリン-7の発現によって巨大なカドヘリン-7(+)細胞の凝集塊が形成された。また、異所性カドヘリン-7の発現が内在性カドヘリン-7発現領域と接する場合、内在性カドヘリン-7の発現領域が移動すると共に、Pax7領域の背腹軸に沿った下限も移動した。同時に、背側介在ニューロンの各領域の長さやPax7発現領域の細胞増殖に変化が認められた。しかし、カドヘリン-7の異所性発現による直接の細胞運命や増殖の変化は認められず、異所性カドヘリン-7の発現による内在性カドヘリン-7発現細胞の移動が重要であると考えられた。以上により、内在性カドヘリン-7発現領域の細胞が腹側あるいは背側シグナルセンターからのシグナルの修飾を行っており、内在性カドヘリン-7発現細胞が移動することにより分化誘導シグナルの強度が変化するのではないかと考えられた。
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