研究概要 |
脊髄小脳変性症3型(SCA3)の患者では、異常伸長したCAGリピートを持つ原因遺伝子ataxin-3が蓄積し、神経細胞が変性することが病因である。本研究課題ではプルキンエ細胞特異的L7プロモーター制御下で、異常伸長(69CAGリピート)したataxin-3を発現するトランスジェニック(Tg)マウスを作出した。L7-ataxin-3[Q69]をマウスの受精卵にインジェクションし、3ラインのTgマウス(a, b, cライン)を得た。aラインとbラインでは極めて強い運動失調が生後直後より観察された。これに対し、cラインの運動失調は、野生型とa, bラインの間であった。aラインとbラインのTgマウスでは生後15日の段階ですでに小脳の大きさが野生型より顕著に小さかった。またプルキンエ細胞内にataxin-3を含む凝集塊が認められた。cラインの小脳はまだ観察していないが、やはり野生型とa, bラインの中間の大きさであると予想される。 ロータロッドによる運動能力の解析(室町機械製、3分で40回転まで加速)では、生後3週の時点で運動失調が強く、その後も14週まで調べたが悪い状態で一定していた。cラインでも生後3週でロータロッドの成績は野生型より有意に劣っていたが、a, bラインより優れていた。その後、6週にかけて成績は向上したが、それ以降は一定となった。体重の増加はa, bラインでは生後3週の時点で野生型より悪く、生後14週の時点では野生型の8割程度であった。cラインの体重の増加も、他の所見と同様、ほぼ野生型とa, bラインの中間であった。
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